一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 その言い方は、派遣を同業者として認めないと言っているようにも聞こえた。
 口をつぐみ、無表情だった岡田が、ようやく言葉を発した。
 
「お前、ATBの人間の癖に名刺も持ってないのか」
 
 元同僚がムッとする。

「あ? 持ってないわけないだろ? 運転士じゃあるまいし。失礼な言い方すんな」
 
「失礼なのは、どっちだ」
 
 どこまでも人を見下した言い方をする元同僚に、岡田は、今までが比じゃない程の冷たい顔を見せた。
 
「相手から差し出されたら、ちゃんと自分のも出せよ。名刺交換すらまともに出来ないのか」
 
「フリーの添乗員だろ? そんな中途半端な人間と交換する価値あるか? 」

「雇用形態で態度を変えるなんて肩書き以前に人間としてクソだな」

「……なっ」

「そんな奴が添乗員なんだから、ツアーの内容もクソなんだろう。お前の客が気の毒だ」
 
 ATBの添乗員は、岡田の反撃に顔を真っ赤にしていた。
 
 
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