一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 大学卒業後に上京し、大手旅行会社ATBに就職した俺は、営業として店舗のカウンター業務をこなすことになった。
 
 まずは国内旅行の担当。
 
 営業時間前に、国内の天候・交通情報を確認し、セールスポイントになる商品のあらゆる情報をできる限り集めておく。
 
 そうでなければ、特に旅行慣れした客へ潤滑に勧めることが出来ないからだ。
 
 逆に、どこに行きたいか、どんな旅行にしたいか目的の定まっていない手間のかかる客や、行く気もないのに話だけを延々にする者もいた。
 
 始めの数ヵ月は客に振り回されっぱなしだったが、入社して一年経つうちに、客の顔を見ただけで、その人が旅慣れしてるのか、そうでないのか、どういったいパッケージを求めるのか直感で分かるようになっていった。
 

「岡田、客ウケいいぞ。特に女性客に」
 
「ありがとうございます」
 
 
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