一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 わが社と上野ブライダルとの提携契約が順調に進んだ頃、
 
「赤ちゃんできたみたいなの」
 
 倫子が妊娠をした。
 
 付き合って五年目のことだった。
 
 半同棲みたいな生活をしていた俺達だったが、ちゃんとけじめをつける良いキッカケだと思って、直ぐに入籍を決めた。
 
 上司に報告すると、
 
「式は勿論、上野ブライダルだよな?」
 
「あ、いや。俺の地元は九州なんで」
 
「上野ブライダルは九州にも支店がある。それより、どうだ? この際、ハワイで挙式したら」
 
「それは、身重の彼女に聞いてみないと……」
 
「どっちにしろ、上野ブライダル以外で挙げたら角がたつ。夫の顔に泥を塗るような決断はしないだろ」
 
 有無を言わさず、俺の挙式・披露宴の場所を決めつけた。

 まいった。
 
 俺の結婚の情報を、上野泰子が掴まないはずがなく、式場予約後、彼女からのラインが来て、それを見た途端、背筋が凍ったのを覚えている。

 【ご結婚おめでとうございます。奥様、ご懐妊ということで。
 
  …………嘘つき。
 
 わざわざうちを使うあたり無神経過ぎませんか?
 私を侮辱した男は許さない】

 
  ″許さない ″。
 

 この後、文字通りの理不尽な報復が待っていた。


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