一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 ″トラベルプロの桑崎紫都を使ったツアーの評判は良い″

 
 数年かけて、南部観光バスの運転士になった俺の耳に入ってきた噂だ。
 
 今や大手旅行会社も、経費削減のために添乗員やガイドを保有しない時代になり、ツアーにも派遣会社の添乗員を使うようになった。
 
「へぇ、その桑崎って美人なの? 話が上手いの?」
 
「別に普通なんだけどね。何故かお客様アンケートでは、ダントツ人気なのよねぇ」

「二回くらいツアーで一緒になったけど、気遣いが行き届く人だった」
 
「うちの会社も桑崎さんばっかり指名してる」
 
 客だけではなく、運転士やガイドの間でも評判だった。
 
 女に懲りていた俺は、その噂を聞いても特に興味を持つ事なく、ひたすら長距離の運転をする毎日を過ごしていた。
 
 客もそう、仕事仲間もそう。
 
 もう、女とは極力関わりを持たない。
 そう決めていたから。


 
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