一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「おはようございます。トラベルプロの桑崎です。三日間宜しくお願いします」
 
 桜の名所巡りツアー初日の、バスでの打ち合わせ。
 
 その桑崎紫都は、青白い顔で挨拶をしてきた。
 
 こいつが、評判の人気添乗員か。
 
 ATB時代から様々な添乗員を見てきたが、正直、その見た目の地味さに驚いた。
 
(うす)……」
 
「え? 何か言いましたか?」
 
 思わず呟いた俺の顔を、小豆(あずき)のような瞳で覗き込む。
 
「別に」
 
 老舗旅館で女将に虐められる、冴えない仲居のような女だ。
 一度そう思うと、もう、そうにしか見えない。
 
 拍子抜けするからあんまり此方を見ないでくれ。
 
 それなのに、桑崎はしっかりと俺の目と口元を見て話す。
 なので俺は、桑崎紫都の顔をあまり見ないことにした。
 
 どうせ三日間だけの付き合いだ。



 
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