一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 恒例の打ち合わせが終わったあと、桑崎が俺の部屋に戻ってきた。
 何かと思ったら、
 
「岡田さん、シャツ、洗います」
 
 鼻血で俺のシャツを汚してしまったのが気になったらしい。
 可愛いとこあるじゃないかと、ついでに肌着まで脱いで投げ渡した。
 
 その間、俺は、早めの風呂に入ることに。
 中国の団体と被ると、文化や意識の違いでイラついたりしそうだからだ。
 
 そして。
 30分、40分経っても、桑崎はシャツを持ってこない。
 
 乾燥機までかけてるんだろうか?
 気になってランドリールームに行くと、一台の乾燥機が丁度終わったところで、ピーピーと鳴っていた。
 
 南部観光バスのマークが見えたから、俺の制服であるのには間違いない。
 
「鼻血は取れたのか?」
 
 取り出して、ガックリきた。
 
「シワッシワッじゃねーか!」
 
 あの女、家で洗濯しねーのか!
 ランドリールームに籠る、洗剤の匂いに負けない香水の残り香にも苛ついた。
 
 三宅がここにいたんだな、と。

 そのまま、部屋に戻ろうとしたけれど。
 乾燥機からシャツが消えてたら、桑崎が探すかもかしれない。そう思って宴会場に赴いた。
 
 そして、ウェルカムボードを見て、またゲンナリした。
 よりによってATBと同じフロアーで晩飯かよ。
 
 まぁ、バイキングだから仕方ない。
 それに、俺の事を知ってる人間がいるとは限らない。ATBも最近は、派遣添乗員を使うって聞いたし。

 
 
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