一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「見て、この莓!キレイなのに 安っ!」「炭火焼地鶏が美味そうだな」
「アルコールは置いてないんだね」
 
 お客様が道の駅で買い物をされている間、病院に電話をして赤石さんの容態を確認した。

「良かった………」

 思わず呟く。意識もしっかりしていて、今日にも造影検査を行うとのこと。
 一先ず、安心だ。
 
「添乗員さん、一緒に食べませんか?」
 
 電話が終わったところで、ソフトクリームを2つ持った三宅くんに声をかけられた。

「あ、ありがとうございます」
 
 お金を取り出そうとしたら、「一人で食べるの恥ずかしいから」と、無理やり1つを持たされた。
 初日のどら焼きといい、申し訳ないな。

 空いていた外のベンチに腰をおろし、爽やかな甘さのソフトクリームを食べる。
 
 ……そういえば、昨日、この人にハグされたんだった。
 色々あって忘れていた。
 夜と同じ匂いが、力強い腕の感触を思い出させた。
 
「臨機応変が必要な仕事ですよね、旅行の添乗員って」

「え? ええ、そうね」
 
 不意に真面目な話。
 この三宅くんは、年齢や、あか抜けた容姿からは想像つかないほど誠実で、落ち着いていて、信頼もできる人。
 
「本当は次の場所も悩んでるの」
 
 なので、つい添乗員としての本音も洩らしてしまった。
 
 

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