一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 散策時間を終え、食事処のある観光センターに移動しようとした時だった。
 
「ね、なんかあの団体、芸能人っぽいよ」
 
 主婦グループが駐車場に止まっていたロケバスらしきものに気が付いた。
 
「やっぱり、そうですね! くまもんもいますから、何かの撮影でしょう」
 
 蛯原さんの、ソワソワした感じが伝わってきた。
 やっぱり少しミーハーなのね。
 
「お、あれ。片桐英子じゃね?」
 
 南条さんが、ロケバスから降りてくる大柄の女性を指差して、スマホで撮り始める。
 
「誰ですか、それ」
 
 若い女の子達は知らないみたいだけど、数年前までは、良く二時間ドラマの悪役になっていた名脇女優だ。
 
 最近はエッセイも出して、多方面で活躍してる。
 
 バスに乗り込もうとしていた三宅くんの足が止まった。

「どうした? 乗らないのか?」
 
 岡田が三宅くんに声をかけるも、彼の視線は数十メートル先のロケバスから動かない。
 
「三宅さん、もしかして……」
 
  蛯原さんがハッとしたような顔をした。
 
 
「くまもん大好き?」
 
 
< 185 / 316 >

この作品をシェア

pagetop