一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 このバスには、ニーリング機構と呼ばれるものが装備されていて、スイッチを操作するとエアサスのエアーが抜けて車高が下がる。
 
 車椅子などで乗降されるお客様がいた場合は車高を下げ、スロープを出すのと同じようにそれを出したから。
 
「あっ、バス!」
 
 起き上がり、本来乗るべきだったバスを追いかけて、その男の人は走り去っていった。
 
「あっちのバスは点呼しないのかねぇ」
 
  今度はホッとしたような笑いが起き、
 
「運転手さん! ナイス!」
 
 女の子達を始めとする拍手まで鳴り響く。
 岡田は、クラクションを鳴らして、走る男と気が付かないバスを止めて、あちらの若い添乗員の女の子が慌てて降りてくるのを確認していた。
 
 そして。
 そのまま熊本港を目指して走らせた。
 
「イケメン運転手のお陰で一件落着だな」
 
 南條さんが珍しく人を誉めた。
 時間を押しても、安全運転で市街地を走り抜ける。
 
 岡田が、かっこよく見えた。




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