一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「まずは簡単なものから出しますね、これは何と読むかお分かりになりますか?」
 
 蛯原さんがマジックで書いた名前は、″赤斗 ″。
 
「せきと、しか読まんやろ」と、前の席の方が答えたあと、
 
「れっど?」
 と、主婦グループの一人が正解を言った。
 
「何でわざわざ英語?! 逆にダサくね?」
 
 南条さんのツッコミに、年配の方々がウンウンと頷く。
 和やかに進む読み当てのクイズの間、私はレポートの追加を進めさせてもらう。
 ……と、思ったけど。
 あまりの面白さに、つい、私もクイズにのめり込んで見てしまう。
 
 キュッキュッ……と蛯原さんのマジックを走らせる音に耳を澄ます。
 
「はい、これも簡単なものです」
 
  ″沙音瑠 ″ 。
 
「さ、ねる?」
 
 木下さんのお父さんの方が首をかしげている。
 
「近いですね、これは私も大好きなブランドです!」
 
  蛯原さんが、にやっと笑うと、
 
 
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