一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
第六章 優子の青春と恋
 10年が一昔ならば、それはもう二昔前。
 
「ガイドさん! 一緒に写真撮ってもいいですか?」
 
 憧れのバスガイドになりたての頃は、もてはやされ、ドライバーや男性添乗員、お客様にも良く誘われた。
 
「可愛いなー、キョンキョンに似てるって言われるだろ? 飲みに行こうか 」
 
「優子ちゃん、今夜、俺の部屋に来ない?」
 
 まだウブだった私は、今後の仕事に支障をきたすと思いこんでいて、その都度、丁寧にお断りしていた。
 若い女の子だと思ってナメられたら困るし。
 
「大変申し訳ございません、私、婚約者がいまして。浮気を疑われると、慰謝料等でそちらにご迷惑をかけてしまいますので」
 
 勿論、嘘だけど。
 
 当たり障りのない理由で逃げていた。
 
 あ。彼氏はいたのよ。
 中学の時から、むしろいない時期が無かったほど。
 
 だから、自分には自信があった。
 容姿にも、性格も。
 
 歌も好きだし、人前で話をするのも好きだったからバスガイドは天職だという自負もあった。
 
 それが崩れ出しのは、35歳を過ぎた頃――


 
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