一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 美隆と出会ったのも、数年前の【桜紀行】と名打った春のツアーだった。
 
 当時、美隆は26歳。まだサラリーマンだったけれど、いずれ、親が経営する酒屋(従業員は20人ほど)を跡継ぎする予定だった。
 
 その酒屋の慰安旅行で、私は、添乗員として担当させてもらった。
 
  ″少し、外を散歩しませんか? ″
 
 宴会後に誘われて、少しなら、と一緒に庭でお話をした。
 
 饒舌で頭が良くて、顔も好みで、私は直ぐに恋に落ちた。
 
 旅の最中は、手を握ったり、軽く唇を重ねただけだった。
 

 ″旅が終わってからも、二人で会いたい ″
 
 
 私も同じ気持ちだった。
 
 

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