一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「あら、桑崎さん?」

 特別室に引っ張られていると、蛯原さんに呼び止められた。
 
 絶対、変に思うはず。
  
「ねぇ、やっぱり止め……」
「お、ガランとしてる! 貸し切りだったな!」
 
 美隆は、戸を閉めてようやく手を離してくれた。
 ゆっくりと足を伸ばせる、ふっくらとした椅子に珈琲が置けるレストランのようなテーブル。
 
 誰もいない。
 二人きり。
 
「ほら、座って、くつろげよ」
 
 ………仕事中なのに。
 
 戸惑いを隠せない私を無視し、美隆はグッと私の肩を押さえて、椅子に腰を落とさせた。

 隣に座った途端、美隆の左手が私の太股に置かれ、ビクッとなってしまった。掴まれるように強く抑えられたからだ。
 
 そして、また自分の事を話し始める。
 
「俺、嫁さんとは見合いなんだよ」

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