一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 岡田が何か言おうとしたその時、蛯原さんが特別室に入ってきて、美隆の胸をドン! とド突いた。
 
「いって! 何すんだ、このババア!」
 
「あなたでしょう? 桑崎さんの前の職場のHPに有ること無いこと書き込んだの!」
 
 ――え?
 
  蛯原さんの反撃に、思わず足が震えた。
 
 ………知ってたの?
 
 まさか。この岡田も?
 
 
 岡田の顔を見れば、冷たい目で南条さんの方をしゃくる。

「良いからお前は添乗員の仕事しろよ」
 
 
 ドアを閉められ、特別室から蛯原さんと美隆の言い合う声が聞こえたけど、内容は分からない。
 
 情けなさと有りがたさの両方を噛みしめながら、南条さんに寄って声をかけた。
 
「大丈夫ですか? 袋ならありますよ。それともトイレへ行かれますか?」

「……おー、添乗員さん。あんた野鳥にも野蛮な男にもモテモテだな」
 
 この人にも、聞こえてたのか。
 いつもの覇気を無くした南条さんが、ヒヒッと笑う。
 こっちは 全然笑えない。
 
「そ」
 
  そんなことないですよ
  と、言いかけた所で、 南条さんは口を開け私が持っていたビニール袋に、胃の中のモノを勢いよく吐き出した。








 


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