一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「大丈夫? 汚れなかった?」
 
 そっと引戸を開けて、蛯原さんが女子トイレに入ってきた。
 
「はい。………あ、そっちこそ大丈夫ですか? ケガとかは?」
 
 いくら蛯原さんが気が強くても女性だ。
 キレた美隆には敵わないはず。
 
「いっそケガさせられたら、傷害罪で訴えてやったのに、ほんとまぁ、口の減らない男! 桑崎さん、男の趣味悪いんじゃないの?、あら? それ、どうしたの?」
 
 私の首の傷に気が付いた蛯原さんが、ポケットティッシュを当ててくれた。
 微かに血が滲む。
 
 
「………ありがとうございます。…そうですね、付き合ってる時はあそこまで無かったんですけど」
 
  嫉妬深いのは薄々気が付いてはいたけど。
 

 
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