一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 「お疲れ様でしたー、鍵をフロントで受け取ってから各自部屋へ移動されてください。宴会場も大浴場も二階です」
 
 何とか予定通り、5時過ぎにはホテルに到着。
 バスを降りた途端、温泉らしい匂いが漂ってきた。
 
 「硫黄の香りが凄いわねぇ」「ここ泥パックあるらしいよ」

 お客様達は荷物を受け取ると、いそいそと館内へ移動していた。
 7時からの宴会までは、温泉に入ったり買い物をしたり自由時間だ。

 けれど、私達、乗務員の仕事はまだ続く。
 
 「では、明日の打ち合わせをしましょうか」
 
 お客様で満室の場合は、別館や別の宿に宿泊することもあるのだけど、今回は三人とも本館に部屋が用意されていた。
 勿論、三人とも別々だ。
 宿に着いてからは、ドライバーの部屋でお茶を飲みながら反省会や打ち合わせをする。
 
 岡田は相変わらず私の顔を見ないで、コースの確認で頷くばかりだ。
 蛯原さんが淹れたお茶にも手をつけず、ずっと黙っていた。
 
 「ねぇ、あなた、本当に女嫌いなの? それで良く観光バスのドライバーやろうって思ったわね」
 
 

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