一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 木下さん親子が、駅近くのロータリーで下車。
 
 場所にゆとりがあるため、車体を下げて補助をした。
 
「お疲れ様でした、気を付けて帰られて下さいね」
 
 息子さんの手を借りて、ゆっくりと降りていく木下さんが、頷きながら私を見た。
 
「添乗員さん、本当に貴女にはお世話になりました。それなのにうちのバカ息子が迷惑をかけて………」
 
 
「……えっ」「!?」
 
  つい、息子の木下さんと顔を見合わせた。
  誰にも話してないのに、知ってたの?

「南條さんに聞いたんだ。酔っぱらって貴女の部屋に入って行ったって。本当に申し訳ない。でも恨まんでください。こいつも俺の世話ばっかで、魔がさしたんだと………気の毒な男なんです」
 
 よろめきながら、私に深く頭を下げる。
 白い頭が小さく震えていた。
 
「わかってます。もう、気にしていません」
 
  気にしていない、というの嘘だけど。
 
 
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