一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 岡田が指差した前方には、緑色に眼を光らせた獣が立ち止まって此方を睨んでた。
 
 あれがイノシシ?
 
「この辺、あんたの地元だろ? 小さい頃はアレとも遊んでたんだろうが。急に道路に出てくんなって注意しろよ」
 
「私は動物と話せるわけじゃありません」
 
「野生児だろう」
 
「どこをどう取ったらそう見えるのよ」
 
  岡田が笑いながらクラクションを鳴らすと、イノシシは勢いよく道路の脇から林道へと駆けて行った。
 
 最近は、街中にもイノシシや猿が出没するって聞いたことあるけど、本物は初めて見たな。
 
「山を壊すから、食い物が無くなってるんだろうな、気の毒に」
 
 岡田は、らしくない言葉に続けてようやく私の問いに答えた。
 

「で、俺のどこをどう見たらゲイという結果になったんだ。期待にそえなくて悪いが俺はノンケだ」





 
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