一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 私は、岡田の近辺と、乗客の居なくなった車内をそっと振り返った。
 
 暗闇ではあるけれど、こちらの世界とは違う()等は感じない。
 
「なにも、見えませんけど?」
 
「そうか。なら、いい。つまり、言いたいのは、俺にも、女と色々な過去があったってこと。あんたと同じで懲りてるってだけだ」
 
「色々な………」
 
 女性を妊娠させて、その赤ちゃんが亡くなった事実があるってこと?
 
 冗談なのか、真実なのか。いまいち分からない。
 
 だけど、過去を話した途端に横顔に翳りを感じさせる岡田を見ていたら、嘘じゃないんだと思った。
 
「そろそろ着くぞ」
 
 岡田は、数メートル先の駅を見つめ、バスのウインカーを上げたあとに速度を落とした。
 
 そこは私が降りる場所だった。


 
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