一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 ストレートな質問はまだ続く。
 なんで、そっちの話ばかり? 何か縁談でもあるの?
 しかしながら、ご本人も独身を貫いてるのに?
 
 
「この歳になると、ちょっと臆病になって、なかなか……」
 
 年齢を理由に言葉を濁すと、赤石さんは、
 
「この歳っていうほどでもなかろう、ほら」
 
 と言って、何故か、ごま豆腐の残りを私にすすめてきた。
 
「これね、私の旦那が一番好きな食べ物だった」

「え? 旦那さん? ご結婚されてたんですか?」
 
  もしかして、後家さん?
 
 赤石さんは、驚いた私の顔を見て面白そうにしていた。
 
「小さい目がそこまで開くかね! そう、一人目とも二人目とも死に別れ。あ、ごま豆腐が好きだったのは二人目ね」

「……そうだったんですか」
 
 
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