一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「じゃあな、明日、9時に迎えに来るからな」

 洗濯と少しだけ、荷物の整理を手伝って、私と岡田は、病室を後にした。
 去り際、

「いいかい、奪うつもりで、だよ?」

 と、赤石さんが念を押したので、恥ずかしかった。
 別に、岡田の事を好きだって言ってないのに。
 
「何だよ、俺からカツアゲでもするつもりか?」
 
 岡田がまたつまんない冗談を言う。
 
「そんなに困ってません」
 
「実家暮らしが一番優雅だからな」
 
 鼻で笑われて、胸がチクリ………とした。
 
 私自身、本当に自立する為には、一度は家を出た方が良いと心の何処かで思っていたからだ。
 

 
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