一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 仕事ではないホテルのシングル部屋。デスクも大きいし、高級感あるホテルだ。
 
 荷物を置いてから、ベッドにゴロッとなって目を瞑る。
 
 あれ? 壁が薄い?
 
 今、ベッドに腰をおろした、とか、お風呂を貯めてる、とか。隣の岡田の動きが何となくわかってしまって嫌だった。
 
 だって、あっちにも分かるってことでしょ?
 テレビをつけても、パッとする番組はない。一人での、目的のない時間は勿体ない気がした。
 
「とりあえず、シャワー浴びよう」

 このユニットバスっていうのは苦手だ。
 
 中学の修学旅行で、使い方がわからずに、トイレの方まで水浸しにした想い出がある。
 
 旅先なら 温泉がいい。
 温泉、また浸かりたいな。でも、一人旅は寂しいから、誰か……。
 
 誰かって誰?
 ボヤボヤ~っと頭に浮かんだのは、岡田だった。
 
 駄目だ。赤石さんに煽られておかしくなってる。
 
 髪を乾かして、スマホを触っていると、トン! と壁を軽く叩く音がした。
 
 岡田からのサイン?
 
 ″ いつでもどうぞ ″って、意味?
 
 心臓が急に暴れ出した。













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