一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 ラインや電話してこないところも岡田らしい。
 
 私は、念のために【今からそっちに行きます】と打って送った。
 部屋に鍵をかけて、隣のドア前で、やっぱり躊躇う。
 
 鹿児島で、お客様の木下さんに部屋に入られたこと、岡田に叱られたっけ。隙があるって。
 
 そんな人だから、余計に色々考えちゃうのよ。
 私を部屋に招いたのは、自身が完全に安全な男だから?
 それとも、男女の関係になることを前提として誘った?
 
 わからない。
 
 私は、息を吸って、吐いたのと同時にドアを二回叩いた。

 鍵は開いていたみたい。
 解錠の音はせずにドアノブが動いた。
 
 「遅かったな、先にやってた」
 
 岡田が扉を大きく開けて、私を招き入れる。
 
 部屋が薄暗くてドキッとした。
 
 「………すみません、テレビに観ハマってて」
 
 嘘だけど。
 
 「何か面白いのやってたか? 俺は即効、消した」

 そう言う岡田の部屋のテレビには、有料の映画。
 
 「これ、なんですか?」

 「いや、タイトル分かんない。好きなの無かったから適当に選んだ。ボンヤリ観てるだけ。多分、ヒューマン系かな」
 
 「へぇ……」
 
  お金払うのに、適当に選んだんだ。
  がっつりアダルト観てたら、それはそれで引いたけど。
 
 
< 291 / 316 >

この作品をシェア

pagetop