一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「………え」
 
  岡田が、二本目のビールを空けて呟くように言った。
 
「じゃなきゃ、この時間、一人で後悔してた」

「………後悔? 何を?」
 
「過去、を」
 
「どうして?」
 
 私は、ピーナッツの殻を剥いていた手を止めた。
 
「赤石婆さんを見ていたら、元嫁の事を何となく思い出すから………」
 
 そっか。この人、バツイチだった。
 
 言葉の端に刹那を感じさせる岡田は、私が殻を剥いたピーナッツを、一つ摘まんで口に入れ、
 
「赤石さんと奥さんって似てるの?」
 
 私の質問が悪かったのか、それを喉に詰まらせていた。

 
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