一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 美隆のこと、フェリーでの行動からそう見えたんだ。
 でも、実際は想い出を美化して引きずっていたのは私。

「そんなことないです。あっちは早々に切り替えて結婚してるし、奥さんが妊娠中に遊びたかっただけだと思います」
 
 私は、岡田の手から日本酒のカップを取った。

「お、そっちにいくか? チューハイ取るかと思ったら」
 
「言ったじゃない、甘いのはあんまり好きじゃないって」
 
 一口飲むと、 ビールとは違う辛さに口の中が熱くなった。
 
 この辛さ、唐辛子ガムを思い出すな。
 だけど、美味しいのでツマミなしでもイケる。
 気分よく、半分飲んだところで、

「お前、ザル?」
 
 岡田がちょっと険しい顔をして聞いてきた。
 
 
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