一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 二人の間には沈黙が走り、テレビから、話の見えない映画の音が聞こえているだけだった。
 
 ……私の言った意味、分からなかったの?
 
 岡田は、ただじっと、私の目と唇を見つめている。
 思わず、羞恥から顔を背けてしまうくらいに。
 
「もう、恋愛はしないと思っていたのにな」
 
 岡田がようやく口にした言葉は、私の思いと同じだった。
 
「私も、です」
 
 岡田が、私の顔についた髪を指で丁寧に耳にかけて、そして笑った。
 
「なのに、どこをどう間違ったのか、俺はあんたが気になって仕方なくなった。この小さな目も、一見、薄情そうな唇も、隙だらけの性格も………」
 
「それ、けなしてる? 」
 
「………いや、とりあえず、二回目のキスしていいか? 」


 
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