一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 わざわざ聞いちゃうんだ。
 私が ″うん ″と言う前に、岡田の鼻先が右頬に降りてくる。
 
 シャンプーの匂いが広がって、力が抜けると、岡田の唇が私の輪郭をなぞった。
 
 冷たく、くすぐったい感覚にそこから熱くなって、そして、はたと冷静になる。
 
「二回目の? ………一回目はいつ?」
 
 私の問いに岡田が顔を上げて小さく笑った。
 
「さぁ、な」
 
「さぁなって、そこ大事なところなのに、イケメンぶって濁さないで」
 
「ぶってってなんだよ」
 
「やっぱり、あの時なの? ねぇ、そうなの?」
 
 私は、船で聞き損ねた件を確かめるべく持ってきたアレを、ポケットから取り出した。
 唐辛子ガムを。
 
 
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