一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 これを食べた時、タクシーの中で目覚めた後の辛味に似てたから、まさか、とは思っていた。
 
 岡田は、私が取り出して見せたガムを見て、クッといつもみたいな笑い方をした。
 
 「やっと気が付いたか、おせーよ」



 ――イメージ通り、というか。
 
 岡田とのセックス中に、甘い言葉はなかった。
 
 好き、だとか、付き合おう、だとか、そんな ありふれた当たり前のセリフは、彼の中には存在しないのかもしれない。
 
 これが一夜限りのものだったのか、それともずっと続けるつもりだったのかは、一晩中一緒にいても分からなかった。


 

 
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