一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「お母さんが出てきたからって、無理しなくてもいいのに」
 
 半分呆れてそう言うと、岡田は、また無表情に戻って前を向いて答えた。
 
「別に、そんなんじゃない」
 
「………」
 

 改めて思ったけれど、この人、素がこういう顔なのね。
 
 無駄に整ってる分、変顔でもしない限り冷たく見える、実は損してるタイプ。

「じゃあ、どこに行ってるの?」
 
 車から見える景色は、寂しいグレーの空に覆われた、つまらない見慣れた街並だ。

「公園に。桜の木の下の死体を探しに」
 
 つまらない冗談に、岡田がクク……と、一人で小さく笑っていた。


 
 
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