一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 15分ほど車を走らせて止まったのは、遅咲きの桜が有名な公園だった。
 
 私も何度も足を運んだことのある、馴染みのある場所だった。
 
 ソメイヨシノもあるけれど、それが終わっても花見を楽しめるクシマザクラ・カンザン・ショウゲツなど多種植えてある。
 本日もまだ満開中。
 
「ツアー、ここを入れておけば良かったのにな」
 
「そうね、まぁ、近すぎるってのもあるけど」
 
 夜もライトアップされるため、この時間でも花見客が絶えない。
 
 岡田も、桜に見とれるように歩いている。
 仕事中には見られなかった顔だ。
 
 赤石さんの文庫に挟んでいた花弁といい、岡田は、ロマンチストな所があるのかもしれない。
 
「………どうして、ここに来たかったの?」

 愚問だったのか、それをスルーして岡田は、突如、
 
「あれとか」
 
 神社近辺に植えられているカンザンを指差した。
 
 
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