一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 カンザンは大形の八重咲きで色は濃紅色で艶やかに咲き、見上げると十メートル以上はある、圧巻的に美しい桜だ。
 
「あれがどうしたの?」
 
「下に死体が埋まってそうなんだよな」
 
  岡田の発言に、 私は思わず苦笑いした。
 
「それ、まだ続いていたの?」
 
「何がだよ。良く言うだろ、普通の桜より赤いやつの下には死体があって、それを栄養源にしてるって」
 
「田原坂とかではそういう迷信あるけど、実際そんなわけないじゃない」
 
「オカルト研究者らしからぬ発言だな」
 
「急に人のこと、オタクチックに言わないで下さい。あなたこそ現実主義者らしからぬ、ですよ」
 
  言うほど、岡田のことを知らないけれど。
 
「確かに、ジンクスなんてものは信じないけど、儚いものは好きだよ、女なんて大概そうだろ」

  出た。
 
  ″女なんて ″発言。
 
 こればっかりは、どんなに関係を深めてもムッとする。 確かに私も桜は好きだけど。
 
「女を一括りで断言するの良くないですよ。素直に、散る前の桜を見たかったって言えばいいのに」
 
「………」
 
  反撃すると、岡田が黙ってしまった。
  こうやって口をつぐんでしまうと、何を考えてるのか全く分からない謎の男になっちゃう。
 
 
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