一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 並んで歩いていても、自然と二人の間に距離が出来た。前方には、腕を組んだり、手を繋いでるカップルだっているのに。
 
 いいなぁ……。
 
 岡田は、歩幅を広めて堀のある方へ歩き出した。
 
「ちょ、待ってよ」
 
 足の長さが違うんだから、追い付かないっての。

 颯爽と歩いていた岡田の足が、一本の桜の木の前で止まる。
 
「……これ」
 
 白、というより、薄黄緑色の透明感のある花を咲かせた桜。
 
「それがどうしたんですか?」
 
 今度は、どんなオカルトな話をするのかと思ったら………、

「ウコンっていうんだよな、確か日本で27本しか確認されてないっていう稀少なやつ」
 
 儚いものが好きだという岡田が、ライティングされ、ますます神秘的な姿になったそれを、目を細めて見ていた。

 
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