一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 後ろから誰か、話しかけてきた。
 柔らかい声に反射的に振り向くと、コンビニの袋を下げた三宅くんが立っていた。
 思わず顔が緩む。
 
「壊れてるって、どれ?」
 
 自販機に ″故障中 ″の貼り紙等はない。
 
「これ」
 
 三台並んだ、一番右のビールの自販機を指差して、三宅くんは、自身の袋をかがけて見せた。
 
 中には缶ビールや酎ハイが入っているようだ。
 
「飲み足らなくて、この自販機に買いに来たら壊れてて。下のコンビニまで散歩ついでに行ってきたんです」
 
「結構歩いたんじゃないの?」
 
「そうでもない、10分もかかってないし」
 
 答えて時間を見る彼の腕には、ゴールドの時計が光っていた。
 芸能人の私服トータル金額をネタにする番組で、良く出てくる超高級なブランドものだ。

 カメラマンって、そんなに儲かるの?
 
 
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