一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「私、前もこのコースのツアーに参加したんだけど、左側の方が桜の木に近くなるのよねぇ、写真を撮りたいから替わって貰えない?」
私は苦笑いした。
左側にのみ、桜の木が多く植えてある場所なんて通らないし、恐らく桜はもう散っている。
替わっても無駄だ。
……とも言えないので、
「左側座席の皆さんに御相談があります」
一応、他のお客様に打診をしてみた。
「どなたか席をかわってくださる方いませんか?」
けれども、理由が理由なだけに、誰も応じてはくれない。
「写真撮りたいだけの為に替えてほしいなんて、ワガママなんじゃないですか? 」
左側の、主婦のグループが赤石さんに異議を唱えた。
「は? ″だけ ″って何?! 私の生き甲斐は花を写真に残すこと! 価値観の違いをワガママと置き換えるなんて浅はかだよ。あんたらこそ年寄りを思いやる優しさが足らないんじゃないの!」
目を見開いて、赤石さんが荒々しく反論。
――マズイ。この空気。
私は苦笑いした。
左側にのみ、桜の木が多く植えてある場所なんて通らないし、恐らく桜はもう散っている。
替わっても無駄だ。
……とも言えないので、
「左側座席の皆さんに御相談があります」
一応、他のお客様に打診をしてみた。
「どなたか席をかわってくださる方いませんか?」
けれども、理由が理由なだけに、誰も応じてはくれない。
「写真撮りたいだけの為に替えてほしいなんて、ワガママなんじゃないですか? 」
左側の、主婦のグループが赤石さんに異議を唱えた。
「は? ″だけ ″って何?! 私の生き甲斐は花を写真に残すこと! 価値観の違いをワガママと置き換えるなんて浅はかだよ。あんたらこそ年寄りを思いやる優しさが足らないんじゃないの!」
目を見開いて、赤石さんが荒々しく反論。
――マズイ。この空気。