一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 何とかせねば。
 三日間、刺々しい空気での旅になってしまう。
 良い案がないか、頭をフル回転させていると、

 「僕、替わってもいいですよ」
 
 左奥の男性客が手を挙げてくれた。

  あら、この人は――。
 
 「右でも左でもどっちでも構わないので、どうぞ」
 
 そう言って荷物を持って立ち上がったのは、今回参加者の最年少、26歳の三宅(みやけ)大伍(だいご)くん。
 
 色白で髪もふんわりと長めで、中性的な美青年という感じだ。
 確か、職業は……、
 
 「本当にいいの? おにいさんも良いカメラ持って、写真が目的なんじゃないの?」
 
 「ええ、でも、基本、車内からの撮影は苦手で座席は関係ないんで」
 
  ″フリーのカメラマン ″と記載してあった。

 「そう? じゃぁ、お言葉に甘えて」
 
 赤石さんと席を入れ替わる三宅くんから、とてもいい匂いが漂ってきた。

 こんなあか抜けた若者が、一人でツアー参加なんて珍しい。
 
 
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