一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 霧島神宮の神木は、南九州全部の杉の先祖らしく、その樹齢からくる存在感には、確かに非現実的なパワーがあるように思う。
 
「あれが神様って言われてるのかな?」
 
 神木の裏に回った三宅くんが、左の枝にカメラを向けて、その姿を収めようとしていた。
 
「そうね、言われてみたら、神様に見えるわね」
 
 表から見たら、そんな風には感じないのに、こちら側からだと、枝の先が小さな人が手を合わせているシルエットに見えないこともない。
 
「遠目の方がいいのかな」
 
 しきりにシャッターを切る三宅くんを見つめていると、南条さんが私を見てる事に気が付いた。
 
「南条さん、どうされました?」

「別に」
 
 絶対に何か言いた気だったのに。
 南条さんは、私から目をそらして、ダラダラと参拝の列に並んでいた。
 まだ、お酒が残ってるのだろう。
 
「俺、願い事があるんで参拝してきますね」
 
 カメラを仕舞った三宅くんも、列に加わる。
 私も、参拝しようかな……。
 無事に旅が終わるように、神様にお願いしてみよう。
 
 けれど、想いが足りなかったのか、この南九州の旅の波乱は、まだ終わってはいなかった。







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