一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 そろそろ予定の公園に着くかな、と外を確認していると、バスが急停車した。

「どうしたんですか?」
 
 運転席に近寄って、岡田の顔を見た。
   
「このまま進むと、あれを折ってしまう」
 
  岡田の目線は、バスの前方を塞ぐ桜の枝にあった。
 
 大型車の規制のない、一方通行の登り道。
 
 満開ならば、さぞや美しかったであろう桜の並木道だけど、剪定のされていない伸び放題の枝がいくつも垂れて、前進不可能だ。
 
 後ろからは一般の車が続いていた。
 
「バックして少し広めの所で後の車を行かせる。そして入口に戻る」
 
「こんな狭い急斜面をバックするんですか?」
 
「じゃないと、桜にもバスにも傷がつく」
 
 岡田の決断は、運転テクニックを試される非常に難しい事だった。

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