一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「おい!」
三宅くんが立ち上がった時だった。
「スミマセ~ン! バスの中を唄って盛り上げるのはガイドの仕事です! 添乗員さん、私の見せどころ奪わないでね!」
蛯原さんが私からマイク取り、歌うように言った。
「また、あんたか! ババアがしゃしゃり出てくんじゃねーよ!」
南条さんのキツいヤジに一瞬、顔をひきつらせるも、昨日の岡田の言葉が効いたのか笑顔で応え、
「ババアだからしゃしゃり出てくるんです! それに添乗員さんは、あくまでも旅の行程を管理する人で、ガイドの仕事まで手を出した場合は訴えられることもあるんです。どうぞ両者の立場をご理解くださいね、ということで一曲……」
アカペラで鹿児島にちなんだ唄を歌い始めた。
元ちとせさんが唄っていた、【黒だんど節】を。
話し声とはうってかわって、蛯原さんの歌声は低いのにとても綺麗で、始め小バカにしていた南条さんも、途中から聞き惚れているようだった。
「お粗末さまでしたー」
蛯原さんが歌い終わると、真っ先に三宅くんが拍手をし、他のお客様もそれに続けて惜しみ無い拍手を送った。
「ガイドさんは歌手みたいだね! 私のリクエストに応えてくれる?」
赤石さんが昔の歌謡曲をお願いしても、蛯原さんはちゃんと知っていて、時々、歌詞を誤魔化しながらも目的地に着くまで笑顔で歌っていた。
なにをかくそう、 蛯原さんは添乗員の間でも、″歌が上手い・歩くカラオケ ″として有名なガイドだった。
三宅くんが立ち上がった時だった。
「スミマセ~ン! バスの中を唄って盛り上げるのはガイドの仕事です! 添乗員さん、私の見せどころ奪わないでね!」
蛯原さんが私からマイク取り、歌うように言った。
「また、あんたか! ババアがしゃしゃり出てくんじゃねーよ!」
南条さんのキツいヤジに一瞬、顔をひきつらせるも、昨日の岡田の言葉が効いたのか笑顔で応え、
「ババアだからしゃしゃり出てくるんです! それに添乗員さんは、あくまでも旅の行程を管理する人で、ガイドの仕事まで手を出した場合は訴えられることもあるんです。どうぞ両者の立場をご理解くださいね、ということで一曲……」
アカペラで鹿児島にちなんだ唄を歌い始めた。
元ちとせさんが唄っていた、【黒だんど節】を。
話し声とはうってかわって、蛯原さんの歌声は低いのにとても綺麗で、始め小バカにしていた南条さんも、途中から聞き惚れているようだった。
「お粗末さまでしたー」
蛯原さんが歌い終わると、真っ先に三宅くんが拍手をし、他のお客様もそれに続けて惜しみ無い拍手を送った。
「ガイドさんは歌手みたいだね! 私のリクエストに応えてくれる?」
赤石さんが昔の歌謡曲をお願いしても、蛯原さんはちゃんと知っていて、時々、歌詞を誤魔化しながらも目的地に着くまで笑顔で歌っていた。
なにをかくそう、 蛯原さんは添乗員の間でも、″歌が上手い・歩くカラオケ ″として有名なガイドだった。