一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 どういう意味?
 
 まさか、昨夜の事を知っている?
 
 何気に岡田に視線を移す私に、南條さんは更に悪態をついてきた。
 
「客と寝たあと、あの運転士も部屋に呼んだだろ? どんだけ男好きなんだよ? 俺の誘いは断ったくせに」
 
「え」
 
  見られてた?
 
  木下さんが押し入るのも、岡田が助けに来てくれたのも?
 
  蛯原さんが目を丸くして私を見てる。
 
  違う。
 
「あれはっ……」
「どっちが合ってたんだ? そ身体には。やっぱりスマートな運転手か? それともマッチョな木下さんか?」
 
 粘っこい視線で辱しめを受け、自然と顔が熱くなる。
 
「ねぇ、南條さん!」

 二人の間に入るように、蛯原さんが向かい側に止まった派手な観光バスを指差した。

「あの添乗員はどこの国の方か分かりますか?」
 
 そのバスからは韓国人のお客様がゾロゾロと降りてきて、ピンク色のスーツを着た添乗員が一際目立っていた。
 
「すっげぇな、あのミニスカート」
 
  南條さんが食い付き、完全に私から意識が離れる。
 
 情けなくも、また蛯原さんに助け船を出された私を、岡田は、また小バカにした目で見ていた。
 
 ……わかってる。
 
 どーせ、これだから女はって思ってるんでしょ?
 
 ふいっと顔を背けた私は、団体の最後尾について、本日のメインである滝と吊り橋を目指した。

 


 
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