一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「鼻は腫れてないから骨には異常なさそうだけどねぇ」
 
 待機している元看護師というのは、お客様の赤石さんだった。
 
 バスに戻った私の鼻をそっと触って、冷たい氷で冷やしてくれた。
 
「ありがとうございます。この氷は、どこで?」
 
「そこの売店。あとで請求するから。五割増しで」
 
 赤石さんが駐車場にある大きな売店を指さした。
 
「は、はい。全然構いません」
 
「冗談だよ、何でも真に受けて、頭カチカチの添乗員さんだね、全く」
 
「よく言われます……」
 
 冷やしたお陰なのか、鼻血はすっかり止まった。
 
 
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