エリート弁護士の神崎くんは、初恋を拗らせている
プロローグ
名刺に記された名前を見た瞬間、全身の血が音を立てて引いていった。
──神崎朔也
思わず顔を上げる。
そこに立っていたのは、背の高いスーツ姿の男だった。整えられた髪、無駄のない立ち姿。
記憶の中の少年よりもずっと大人びている。
けれど。
一瞬だけ、その瞳の奥に懐かしい“空の色”が滲んだ気がした。
(……まさか)
そう思った次の瞬間、朱里は慌てて視線を落とす。
「こちら、今月から担当していただくことになった弁護士の神崎です」
紹介の声が少し遠くに聞こえた。
「神崎と申します。よろしくお願いいたします」
低く、よく通る声。
丁寧な所作で名刺が差し出される。
「……明月出版、総務課の藤井朱里です。よろしくお願いします」
自分でも驚くほど声は落ち着いていた。
白い名刺に印字された名前を、もう一度だけ確かめる。
神崎朔也。
朱里は、静かに息を吐いた。
(……似てる、だけ?)
そう言い聞かせるように、心の中で呟いてから、
彼女は業務用の笑顔を貼り付けた。
──神崎朔也
思わず顔を上げる。
そこに立っていたのは、背の高いスーツ姿の男だった。整えられた髪、無駄のない立ち姿。
記憶の中の少年よりもずっと大人びている。
けれど。
一瞬だけ、その瞳の奥に懐かしい“空の色”が滲んだ気がした。
(……まさか)
そう思った次の瞬間、朱里は慌てて視線を落とす。
「こちら、今月から担当していただくことになった弁護士の神崎です」
紹介の声が少し遠くに聞こえた。
「神崎と申します。よろしくお願いいたします」
低く、よく通る声。
丁寧な所作で名刺が差し出される。
「……明月出版、総務課の藤井朱里です。よろしくお願いします」
自分でも驚くほど声は落ち着いていた。
白い名刺に印字された名前を、もう一度だけ確かめる。
神崎朔也。
朱里は、静かに息を吐いた。
(……似てる、だけ?)
そう言い聞かせるように、心の中で呟いてから、
彼女は業務用の笑顔を貼り付けた。
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