青に溶ける、きみ。



……蝉も、雨には負けるんだ。

そんな、どうでもいいことをぼんやり考えていた時だった。



「夏井」



突然名前を呼ばれて、私は窓の外へ向けていた視線をゆっくり上げる。



「……大塚くん」



いつの間に近くに来ていたのか、大塚くんが私のすぐそばに立っていた。

肩にはスクールバッグがかかっていて、私が見ていた窓の外へ同じように視線を向ける。



「……あー、やっぱ雨嫌だよな」



ぽつりと落とした声は、雨音に溶けてしまいそうなくらい静かだった。

そう呟いて、大塚くんはポケットに入れていた右手を私の机の上へ置く。少しかがむようにして、私との距離をほんの少しだけ縮めてくる。



その瞬間、胸の奥が小さく揺れた。近い、と思うだけで、どうしてこんなにも落ち着かなくなるんだろう。


まっすぐ向けられたその瞳に、私はいつまで経っても慣れない。


< 122 / 221 >

この作品をシェア

pagetop