青に溶ける、きみ。
……蝉も、雨には負けるんだ。
そんな、どうでもいいことをぼんやり考えていた時だった。
「夏井」
突然名前を呼ばれて、私は窓の外へ向けていた視線をゆっくり上げる。
「……大塚くん」
いつの間に近くに来ていたのか、大塚くんが私のすぐそばに立っていた。
肩にはスクールバッグがかかっていて、私が見ていた窓の外へ同じように視線を向ける。
「……あー、やっぱ雨嫌だよな」
ぽつりと落とした声は、雨音に溶けてしまいそうなくらい静かだった。
そう呟いて、大塚くんはポケットに入れていた右手を私の机の上へ置く。少しかがむようにして、私との距離をほんの少しだけ縮めてくる。
その瞬間、胸の奥が小さく揺れた。近い、と思うだけで、どうしてこんなにも落ち着かなくなるんだろう。
まっすぐ向けられたその瞳に、私はいつまで経っても慣れない。