青に溶ける、きみ。
「これなんか、特にそう」
私はノートを開き、テスト範囲に赤線が引かれた『舞姫』のページを指差す。
少し色褪せた紙の上には、縦書きの問題が並んでいた。
──豊太郎がエリスへの愛情を抱きながらも、帰国する決断をした理由を、「自分の立場」と「エリスへの思い」に触れて八十字以内で説明しなさい。
「これの答え、なんだっけ?」
「豊太郎はエリスを愛していたが、免官された自分の立場を立て直し、社会的な地位を取り戻すためには帰国する必要があると考え、彼女との別れを選んだ……って」
「あー、そうだ」
晴海は納得したように頷く。
でも、その横顔を見つめながら、私の胸には小さな疑問が残り続けていた。
本当に、それだけだったのかな。
豊太郎は、本当に自分の未来を選んだだけだったのかな。
もし違ったら。もし、離れたくなんてなかったのに、それでも手放すしかなかったのだとしたら。
言葉にできないものを、自分で理由に変えて飲み込むしかなかったのだとしたら。