青に溶ける、きみ。



「聞きたい?」



もう一度、ゆっくりと問いかける声。


風が吹いて、肩まで伸びた黒髪がふわりと揺れる。

その髪を、晴海はごく自然な仕草で指先に掬い上げた。

さらり、と細い髪が指の間を滑る。



蝉の声も、ページをめくる音も、窓の外で揺れる木々も、全部が遠くへ置き去りになって、私の世界には晴海だけが残る。


見上げた先にあった瞳は、さっきまでの悪戯っぽいものじゃなかった。


夏の日差しみたいに眩しいのに、どこか静かで、胸の奥まで真っ直ぐ届いてしまう熱を宿している。


こんな表情、知らない。こんなふうに私を見る晴海を、私はまだ知らない。



「……っ」



言葉が喉まで来ているのに、あと少しが出てこない。

ただ「聞きたい」と、その四文字を口にすればいいだけなのに。なのに、それが何より難しかった。


もし、その先にある答えが私の願いとは違っていたら。この夏の匂いまで変わってしまう気がして、怖かった。


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