青に溶ける、きみ。



今日は終業式。


体育館に響いていた長い長い校長先生の話がようやく終わって、教室にはロングホームルームまでの少しだけ自由な時間が流れていた。


まだ先生は来ない。明日から始まる夏休みを前に、教室中の空気がふわりと浮かんでいる。



「旅行とか行かなーい?」

「何言ってんの、受験生でしょ」

「えー。でも、高校生活最後の夏休みだよ?」



あちこちから弾む声が聞こえてきて、その言葉が胸のどこかに静かに触れた。


……ああ、この会話、前にも聞いた。


ぼんやりと思い出したのは、球技大会のサッカー練習の日。

照り返しの強いグラウンドで、晴海のまわりに集まっていた友達が「海行こうよ」と笑いながら誘っていた光景。

夏の日差しに溶けそうな笑顔まで、ちゃんと覚えている。



「夏井」



不意に左から名前を呼ばれて、黒板に向けていた視線をゆっくり隣へ向ける。



「夏井は、夏休みなにすんの?」

「私は……」



言葉が喉の奥で止まる。特に何もない。

ただ勉強して、学校に来て、一日が終わるだけ。

高校生活最後の夏休みを机に向かって過ごすなんて言ったら、おかしいかな。もったいないって笑われるかな。


晴海も、そんなふうに思うんだろうか。


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