青に溶ける、きみ。
「まあ、俺らほぼ学校だけど」
私が答える前に、晴海が肩をすくめて笑った。
その何気ない一言に、胸の奥が少しだけほどける。
「まあ、そうだね」
「学校来んの、めんどい?」
頷きかけて、やめた。
本当は朝早いし、暑いし、面倒なことなんていくらでもある。
でも。
「全然面倒くさくないよ。楽しみ」
そう答えると、晴海は、変わってんなと声を漏らして、夏の日差しみたいに軽く笑った。
その笑顔を見ているだけで、教室に吹き込む風まで少しやさしくなった気がした。
楽しみなのは学校じゃない。
白いシャツの袖を揺らしながら笑うその人が、そこにいるから。
ただそれだけの理由を、胸のいちばん静かな場所へそっとしまい込む。
言葉にしてしまえば、夏の陽炎みたいに形を失ってしまいそうで。
窓の外では、青空を震わせるように蝉が鳴いている。眩しさを惜しまないその声を聞きながら、少しだけ羨ましいと思った。
蝉の命は一週間しかないと、誰かが言っていた。本当かどうかは知らない。
それでも、もし私にも終わりが最初から決められていたなら、限られた季節の向こう側へ手を伸ばす勇気くらいは持てたのだろうか。