ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「仕事中は敬語でお願いします。お客様にも敬語ですよ」
「わかっ……わかりました」
 彼は口の端を吊り上げる。笑ったのだろうけれど耀理にはただただ不気味で、子どもなら泣いてしまいそうだ。
 まずはレジ作業を教えるためにレジカウンターに行く。

「多いですね」
 十台も並ぶレジを見て彼は言う。
「お客様も多いので忙しいですよ。書店の仕事は楽だと思われがちですが大変ですよ」
「聞いたことあります。本が重いとか体力が必要とか」
 どれだけわかっているのかと疑念を抱きながら、まずはレジを教える。
 メモをとる彼を意外に思った。仕事を舐めているわけではないらしい。

 だが、実践してみて問題が発生した。
 彼のレジに来たお客様は例外なくびくっと震え、おずおずと本を差し出す。会計を終えると、逃げるように去って行った。
 怖がられてる。
 耀理は焦った。これではお店の印象が悪くなってしまう。もしかしてこれが狙いだったのだろうか。

 客が引いたのを見計らい、耀理は彼をカウンターの隅に呼び寄せた。
「嫌がらせ、やめてくれませんか」
「嫌がらせ?」
 とぼける彼に耀理はイラっとする。

「私に嫌がらせするために来たんですよね。お客さんを威圧するのはやめてください」
 きっぱりと言い切ると、彼は目を見開き、それから視線をさまよわせた。
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