ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「嫌がらせでも威圧でもないです。すみません、俺って昔から目つきが悪くて。少しでも人相を良くしようと笑っても無駄で」
 言い訳する声は悲し気で、耀理は首をかしげる。果たして本当だろうか。確かに目つきは最初から悪い。
「前髪で隠したり眼鏡で隠したりしてみたが、全部だめだっ……でした。特に女性は俺を見るたびに悲鳴を上げるから、一時期は女性に対して無駄に攻撃的で」
 言ったあと、彼はハッとしたように彼女を見た。

「だけどあなたは特別だ。俺の運命、芸術の女神ミューズ」
 にらむ目つきは相変わらずだが、声音がまったく違ってうっとりしている。
 耀理の頭にはたくさんの疑問符が浮かんでいた。運命とか女神とか、なにを言っているのだろう?

「俺、もともとは天乃河静火の名前で小説を書いてたんだ」
「天乃河静火!?」
 耀理は驚愕した。純文学で綺羅星のごとくデビューし、デビュー作が朱田川賞を受賞。三年前からはまったく新作が出ていない。待望の声だけが高まるが、音沙汰は一切ない。

「だけど売れたのはデビュー作だけ。新刊を出しても売れなくて、悩んでいたときにあなたに会ったんだ」
「あの暴言のとき……?」

「あれは謝る。ごめんなさい」
 頭を下げられ、耀理は面食らった。彼が素直に謝るなんて思ってもみなかった。

「幸せそうに本を手に取るあなたを見て、俺の本もこんなふうに買われたいって思った。だけど現実はそうじゃない。あれはただの八つ当たりだったと今ならわかる。だけどあのときは絶対に俺の本は面白い、売れてしかるべきだと思ってたから、恥ずかしいことに理解しない一般人が悪いとすら考えてたんだ」
 耀理は答えられなかった。情報量が多過ぎて、頭の中で整理ができない。

「でも、あなたに怒られて目が覚めた」
 史弥は目を輝かせて続ける。
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