ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「お願いします、書店に反感くらって、やばくって」
「やめてよ、浅沼さん。失礼よ」
「……お前、耀理!?」
 驚愕の声に、耀理は居心地が悪い。

「綺麗になったな、そんな綺麗だったら俺だって心変わりなんてしなかったのに」
 耀理は不快さに眉をひそめた。となりの史弥の怒気が激しくなるが、慎一は気付いた様子がない。

「耀理からも頼んでくれよ。出版社との繋がりを切るなんて作家にとってデメリットだろ」
「いい加減にしろ。今回のこれ、改めて解英社にクレームを入れるからな」

「そんな! 許してください!」
 がばっと慎一は土下座をする。
「許してくれるまでここを動きません!」

「だったらずっとそうしてろ」
 言い捨て、史弥は歩き出す。耀理もついて歩く。
 ちらっと振り返ると、慎一は起き上がって呆然とふたりを見送っていた。

「大丈夫なの?」
「なにごとも潮時がある。ときが来たら自然に解英社とも仕事をするようになるよ」
 潮時は引き際の表現で使われることが多いが、良いタイミングという意味がある。

 到着した建物の中心は吹き抜けで野球ができそうなほどに広く、天井には青空が投影されており、解放感に満ちている。白い螺旋階段もまた雰囲気を作っている。
 整然と並ぶ本棚が美しい。右も左も、下から上まで見渡す限り本が整然と並ぶこの景色は本好きには天国だ。

 今は吹き抜けの中心にステージが設置されており、その前にはパイプ椅子が並べられ、たくさんの人が座っている。
 耀理は史弥に連れていかれ、ひとつだけ空いていた最前列の席に座らされる。
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