ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「あなたは?」
「俺は来賓(らいひん)だから。大丈夫、すぐそこにいるからね」
 彼女の席から見える位置に来賓の席があり、彼はそこに座った。

 式典が始まり、順調に進む。
 しばらくして司会が開式の辞を述べて、図書館長が挨拶をした。
 祝電が披露され、来賓の挨拶が始まる。
 最後の来賓あいさつで、彼がステージの中央に立った。

「本日は私営図書館の開館、まことにおめでとうございます。ここは本好きにとって夢のような場所です。古今東西、さまざまな本が収蔵されており……」
 真面目に始まった挨拶だったが、途中でジョークを交えて笑いをとり、雰囲気の良い中、締めに入るかと思われたのだが。

「さて、私事ではありますが、このたび拙著が映画化前提で出版されることになりました。久しぶりの文芸です」
 おめでたい話に、観客からは拍手が起きる。耀理も一緒に拍手をした。そんな話は初耳で、おそらくはこの場で発表することが前から決まっていたのだろう。
 恋愛小説と同時並行で書いていたのだろうから、その執筆スピードに感心する。そんなに書いていては、確かに書店の勤務と同時並行はできないだろう。

「ありがたくも、編集からは『エンタメの香りを残しつつ、上質な純文学となった』と評価をしていただきました。エンタメの世界で頑張って来た成果だと思います」
 その言葉に、再びの拍手がわく。
 耀理ももちろん、盛大な拍手を送った。
 彼はこの三年、千の夜に情熱の火を静かに燃やして書き続けていたのだろう。

「ありがとうございます。これもすべて、支えてくれた存在がいるからです」
 彼が手を上げると、会場のライトがすべて消えた。
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